19世紀末から20世紀前半のヨーロッパ絵画において、色彩は外界の事物を再現するという役割から次第に解放され、ひとつの表現として自立していきます。
色彩の独立は、印象派の筆触分割にその萌芽を見出すことができます。 新印象派の代表的な画家であるスーラは、印象派の感覚的な筆触分割には飽きたらず、科学的な知識をもとに独自の点描技法を開拓しました。
色彩を純色の小さな点に分解して描くスーラの点描技法は、分割主義と呼ばれ、フランスを超えてヨーロッパ各地に瞬く間に広がります。 そして、シニャックによる理論化にも後押しされて、抽象絵画の創設にも大きく貢献しました。
オランダからパリに出たファン・ゴッホは、新印象派の技法に大きな着想を得て色彩を探究し、やはり点描を通過したモンドリアンは、後年、三原色に分割された宇宙的な調和に満ちた抽象絵画へと到達します。…主催者 |
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会期: 2013 10/4(金)〜12/23(月・祝) 休館日: 毎週火曜日 開館時間: 10:00-18:00 金曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで 会場: 国立新美術館 企画展示室1E 巡回展で開催。 主催:国立新美術館、東京新聞、NHK、NHKプロモーション 巡回展: 広島会場 (2014 1/2〜2/16) 広島県立美術館 愛知会場 (2014 2/25〜4/6) 愛知県美術館 巡回展は終了しました。 |
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「印象派を超えて―点描の画家たち」 プレス内覧会 or 開会式 '2013 10/3 |
芸術は感情を伝達する / 感情を伝達しようとする意図とともに制作される
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ヘンドリスク・ペトルス・ブレマー氏 (ヘレーネのコレクションへのアドバザー) |
ゴッホと色彩の旅へ |
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【展覧会の構成】 |
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本展覧会では、ファン・ゴッホの優れたコレクションで知られるオランダのクレラー=ミュラー美術館の全面的な協力のもと、ファン・ゴッホ、スーラ、モンドリアンら美術史上の巨匠を中心にフランス、オランダ、ベルギーの画家たちの色彩の探究を検証します。
本展は、油彩画、水彩画、素描など合計93点 (内74点はクレラー=ミュラー美術館の所蔵品) の珠玉の作品を通し、絵画の真髄である色彩の輝きを新たな目で捉え直します。
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「印象派を超えて―点描の画家たち」の5章による展覧会構成 T. 印象派の筆触|Brushwork of Impressionism U. スーラとシニャックー―分割主義の誕生と展開|Seurat and Signac: The Origin and Development of Divisionism V. ゴッホと分割主義|Van Gogh and Divisionism W. ベルギーとオランダの分割主義|Divisionism in Belgium and the Netherlands X. モンドリアン―究極の帰結|The Ultimate Conclusion: Piet Mondrian |
T. 印象派の筆触|Brushwork of Impressionism 1874年の第1回印象派展は、モネ、ピサロ、ルノワール、シスレー、セザンヌ、ドガといった、後に印象派を代表する画家たちが出品しました。 印象派の画家たちは、色彩が光の反射であり、生き生きとした筆致により、色彩の煌めきの瞬間を捉えようとしました。 アルフレッド・シスレー(1839-1899) 右側:《舟遊び》 1877年 油彩・カンヴァス 45.6 x 56cm 島根県立美術館蔵 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands 1860年にシスレーは、画家シャルル・グレールのアトリエに入った。 そこには、モネ、ルノワールらがいた。 シスレーの絵画技術が飛躍的に発展するのは1870年代に入ってからで、この作品から、印象主義にきわめて忠実な筆触で、光と大気の移り変わる様相や自然の中の色彩の調和を見て取れる。 |
V. ゴッホと分割主義|Van Gogh and Divisionism ゴッホがパリ滞在(1886/2〜88/2)の期間、彼の作品は劇的な変容が生じた。 以前のバルビゾン派による影響の、暗い灰色の農民生活を描いた色調は、分割主義技法による革新的な色彩の影響を受けて、スペクトルに基づく純粋な色彩理論の視覚混合は、彼を独自の芸術上に発展を決定づけます。 フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890) 《自画像》 1887年4-6月 油彩、厚紙 32.8 x 24cm クレラー=ミュラー美術館蔵 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands ファン・ゴッホはパリに滞在した2年間に、25点もの多くの自画像を描いた。 肖像画において点描のテクニックに、勢いのある線や縞、ハッチングを自由に組み合わせた、分割主義の影響を見ることができる。 その後、分割主義は、彼の一層の独創的芸術にとって、足跡を残した出来事になっていった。 |
X. モンドリアン―究極の帰結|The Ultimate Conclusion: Piet Mondrian モンドリアンは非物質化、極度の抽象にまで突き詰めて、物事の奥の本質へと迫ろうとした。 彼は表現の手段―色彩と線―を分け、それぞれを自律的な独立した要素として扱った。 垂直線と水平線、加えて青、赤、黄などの原色、さらに黒、白、灰色の無彩色が織りなす相互の関係性は、常に変化し続ける均衡のとれた幾何学的コンポジションへとたどり着く。スーラによって動き出した分割主義の発展は、単色の平面をも独立した視覚的特徴をもった作品となり、モンドリアンの絵画によって締めくくられることになる。 モンドリアンの作品は、分割主義のもたらした究極の帰結である。 ピート・モンドリアン(1872-1944) 《コンポジション No.TT》 1913年 油彩、カンヴァス 88 x 115cm クレラー=ミュラー美術館蔵 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands モンドリアンは当時ピカソの使っていた灰色と黄土色を放棄し、また自身の彩色に戻っている。 事物の表象の奥に存在する構造を凝視し、それをカンヴァスに描こうとした。そして男性の垂直性と女性の水平性を組み合わせる。 |
クレラー=ミュラー美術館 (オランダ:デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内 オッテルロー村) © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands Kröller-Müller Museum, otterlo |
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デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内の広大な森の中にあるクレラー=ミュラー美術館は、自然と文化が途切れることなく融合する、ヨーロッパでも数少ない美術館のひとつです。 ヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939) は、オランダにおけるモダンアートの最も重要で、最初期のコレクターのひとりである。 そして、彼女の名前を冠する、オッテルローのクレラー=ミュラー美術館の創設者でもある。 ドイツ生まれのヘレーネは、オランダ人のアントン・クレラーと結婚した後、1888年19歳でオランダにやってきた。 アントン・クレラーは、鉄と石炭を扱う彼女の父親の商社、ミュラー社のビジネス・パートナーの弟であった。 アントン・クレラーの経営下でミュラー社は最盛期を迎えた。 莫大な資金がヘレーネの手に委ねられ、彼女は多くの特徴のある美術作品を購入することができた。 そして、彼女は生涯にわたって国際的に有名な質の高いコレクションを蒐集した。 そこには分割主義の芸術家たちの作品とともに多数のファン・ゴッホの作品が含まれている。 ヘレーネ・クレラーにとって、文化的建造物を寄贈することは、コレクションそのものよりも重要なことであった。 1937年にコレクションはオランダ国家の所有物となった。 アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドによって設計された美術館は、1938年7月13日に開館し、ヘレーネ・クレラーは1939年12月14日に亡くなるまでその館長を務めた。 油彩と素描に関して世界で2番目の規模を誇るファン・ゴッホのコレクションや、ピート・モンドリアン、フェルナン・レジェ、パブロ・ピカソの素晴らしいコレクションがここにあります。 そして、国際的な名声を誇る芸術家たちの作品が並ぶ彫刻庭園は、世界的に有名です。 |
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クレラー=ミュラー美術館のファン・ゴッホのコレクションは世界に類を見ないものである。 アムステルダムのファン・ゴッホ美術館に次いで、270点以上からなる2番目に大きなファン・ゴッホのコレクションを所有している。 |
お問合せ:03-5777-8600 (ハローダイヤル) 展覧会サイト:http://km2013.jp/ 美術館サイト:http://www.nact.jp/ 主催:国立新美術館、東京新聞、NHK、NHKプロモーション 共催:クレラー=ミュラー美術館 後援:オランダ王国大使館 協賛:損保ジャパン 協力:KLMオランダ航空 |
参考資料:Press Release、「印象派を超えて―点描の画家たち」カタログ他。 |
※写真撮影の掲載等は、主催者の許可を得て行っております。 |
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